パスミスを減らす視力の改善と疑似成功体験型トレーニング
ピッチ外から見てると「えっー?」って言いたくなるようなパスミスがよくありますよね。
なぜ簡単そうに見えるパスをミスしてしまうのか?
今回はプレー判断に影響する視力(視界)について考えてみます。
まず、実際にあったプレーをご覧ください。
赤が上に向かって攻撃、ビルドアップの場面です。
赤1から赤2にパス。
青1が厳しく寄せてプレッシャーをかけます。
赤2はたまらず自陣ゴール方向にターン。
そのまま斜め後ろにサポートに入っている赤3にパス・・・
・・・のはずが、青2へのプレゼントパスになってしまいました。
青2はゴールに向かってドリブル、GKと1対1、シュート、ゴール。
「何で相手にパスするんだよ!」とベンチから怒鳴りたくなるところですね。
赤チームは、この失点で同点に追いつかれ、さらに追加点を奪われ負けてしまいましたので、結果的には試合を決めてしまったパスミスとなってしまいました。
この失点の原因は、赤2のパス(キック)が下手だからでしょうか?
仮に同じ距離、同じ角度で相手なしでパス交換の練習をしたとしましょう。
赤2は10本のうち9本は、20cmくらいの誤差で赤3にパスをつなげるはずです。技術的には何の問題もありません(いや、むしろ世界最高レベルです)。
なぜなら、赤2は2014-15シーズン、素晴らしいサッカーを魅せるバイエルンのど真ん中で、パスをつなぎまくっているシャビアロンソのプレーだからです。
(このプレーで、シャビアロンソに面と向かって怒鳴る勇気のない指導者の方は、自チームの選手にも怒鳴らない方がいいかもしれません)
ピッチ外からはこのように見えていても、
シャビアロンソにはこのように見えていたために、赤3と青2の距離を見誤ったのではないでしょうか?
もしハッキリ見えていれば、赤3ではなくGKに戻すという判断をしたと思われます。
次はずっとレベルを下げます。小学1年から6年間サッカーを続けている12歳の黄1です。
8人制の試合でも、4対4のミニゲームでも、本当によくあるのですが、黄1は相手にパスしてしまいます。
黄1はフリーの状態でドリブル。黄2にパス。しかしミス。
自分がフリーの状態でボールを持っているのに、フリーではない選手にパスを出してしまう判断はどうかと思いますが、このような映像を元に判断してプレーしているとしたら・・・
このミスに対してのパスの反復練習はどうでしょうか?
黄1が、このようなパス練習で10回に7回は成功させることができる技術レベルであれば(6年間サッカーを続けている選手にとって、反復練習で10回に7,8回成功させるのは難しいことではないはずです)、キックの練習ではそれほど大きな成果が上がらないかもしれません。
さらにレベルを下げてみましょう。青1は、サッカーを始めて1年くらいの10歳の選手です。
彼はキックインからのリスタートで相手にボールを渡してしまいます。
パスを出せるとことがない。どうしよう。
(パスコースもできてないのに)「ヘイッ」って呼ぶ青2。青2だけがハッキリ見える。青2にパスだ!
視界が悪いから焦るのか、焦るから視界が悪いのか。
いずれにしても、視界をクリアにして落ち着いてインサイドキックができれば、パスの失敗は少なくなるはずです。
視力改善のためのトレーニング
サッカー的な視力を改善するためのトレーニングメニューを紹介します。
マークの練習で紹介したマンツーマン・パス回しを使って「視る」トレーニングを行います。
- 1グループ4人または5人で2色に分かれ、マンツーマンをつくります。
- 一方のチームがポゼッション。
- 攻守は時間で交代。
- ディフェンス側(赤)は、ボールを持っている相手からは奪えません
- 自分のマークの相手へのパスのみ奪うことができます。
- パスが通ってしまたら、奪えません。
この状態で青1はボールを奪われません。(赤1はボールを奪えないものの、近くをウロウロすることで心理的なプレッシャーをかけます)
このトレーニングでは「パスする前に味方全員を見て、もっともいいパスコースを選ぶ」ことを求め、技術的なミスは無視します。
青1は3人の青の選手とそのマークを見てから一番いいポジションにいる選手にパス。
続いて青2は、自分のマークを外してパスコースを作った青3にパス。
しかしこの時、コーチが青2は「見えて(見て)ないな」と思ったらストップをかけ、青2に質問です。「青1と青4も見た?」
「もう一回見て。どこが一番いいと思う?」
青1の方がマークを外しているし、赤1の体が向きが悪い(青には良い)。最もいいパスコースは青1です。
パス(キック)の精度ではなく、見えて(見て)いるかどうかを基準にストップをかけ、視界をクリアにした状態でプレーを再開しましょう。
4対4のロンド|斜め方向にフリーマン
- グリッドの中で2対2
- グリッドの外の対角線上にフリーマン
- ポゼッション
このトレーニングでは、視野が狭くても、ほぼ全員が見えてしまいます。そのため「視野を広げる」というより、しっかり見て「視界をよくする」ことを意識ます。
先程同様、自分以外のチームメート3人を見て、最もいい選手にパスをつなぎます。
コーチはパスが成功したとしても、見えていないプレーをストップします。
例えばこの青2から青4(フリーマン)へのパスが通ったとしても、
次のプレーで詰まってしまうでしょう。
プレーをストップして巻き戻します。視界をクリアにしてからリスタートします。
疑似成功体験型のトレーニング
最後に、キックインで相手にパスしてしまうような場合です。
10歳でサッカーを始めて1年くらいであれば、キックの反復練習の効果は大きいと思いますが、Tiki-taka Styleではあえてミニゲームでトレーニングしてみます。
まだ試行錯誤の段階ですので、効果のほどは未知数ですが、「疑似成功体験を積む」というアプローチを紹介します。
4対4のミニゲームです。
青がキックインした後、最初のボールタッチが赤だった場合、「やり直し」とします。
最初のボールタッチが青で、コントロールミスして奪われるような場合は、プレーを継続します。
キッカーが外にいるので、中では数的不利な状況。技術も高くないわけですから、「やり直し」が何回も続きます。(あまりにも最初のパスがつながらないようなら、フリーマンを入れてください)
それではゲームが白けてしまいますので、3回やり直したら、「赤」は動かず、「青」のみポジションを取り直し、パスを成功させてからゲーム再開です。
この方法であれば、青1はキックの練習を3回行った後、(疑似でも)成功体験が1回増えたことになります。
我慢強く繰り返すことによって「疑似」が取れた「成功体験」となり、当然のプレーになると期待してますが、どうでしょうか。
皆さんもしよろしければ、お試しください。また感想をお聞かせください。