ラインを「上げろっ!」の意図を解説|お子さんのサッカーの試合の観戦力を上げる(一)
サッカー経験がなく、サッカーの試合を見るのは小5のお子さんの試合と、たまにテレビの日本代表戦のみというお父さんから質問をいただきました。
「息子のチームのコーチが試合中によく「上げろっ!」って言います。あれはどういう意図なのでしょうか?」
この質問への回答は2つ考えられます。
- ラインを上げて、相手を下げる
- 全体をコンパクトにする
この2つは基本的なことですので、コーチ、あるいはチームによってラインを上げる意図に違いはないと思われます。
また年代によっても違いはなく、小学生でも高校生でも同じことです。
今回は「ラインを上げて、相手を下げる」について、上げた場合と上げなかった場合を比較して、上げた方が「より危険が少ない」ということを説明したいと思います。
そもそも「ライン」とは?
青のベンチから「上げろ!」と声が出るのは、こういう場面が最も多いと思います。
相手(赤)に攻め込まれ、自陣深い位置からボールを大きく蹴り出した後の場面です。
ここでの「ライン」とは、「ディフェンスライン」です。
ディフェンスの選手だけでなく、その場面にいる中盤の選手も含めます。
下図の例では、青の選手がボールをクリアした後、黄色の2本のラインを上げます。
ラインを上げた後も、この2本のラインが揃っていることが望ましいです。
ラインを上げないとどうなるか?
この場面でラインを上げないとどうなるか、見てみましょう。
蹴り出されたボールを赤1がコントロールしました。
青のプレッシャーを感じつつも、赤1は前線に残る赤2にクロス(ロングボール)を入れました。
よくあるプレーです。
赤2の周囲には青のディフェンスの選手がいるものの、赤2にボールが届いた場合、ヘディングでゴールを狙える距離です。
ゴールエリア目前ですから、赤2は頭に当てれば何とかなりそうな感じ。この場面、危ないですよね?
ラインを上げるとどうなるか?
では、コーチの指示通り、ラインを上げた場合を見てみましょう。
黄色の点線は、上げる前のラインです。
このような場合の上げ幅は、3~5mくらいでしょうか。
ラインを上げた後の黄色の線が、オフサイトラインとなります。
下図では、赤2と赤3の選手がオフサイドポジションになり、「無力」の状態です。
とりあえず無視しましょう。
赤1は赤2と赤3には出せないので、たぶん赤4にクロスを入れるでしょう。
ラインを上げた後でも、青にとってピンチであることは変わりませんね。
(この状態でもし赤1が赤2、赤3にクロスを入れてしまったら、オフサイドとなり、青ボールです)
ピンチですが、この距離から赤4がヘディングシュート、あるいはダイレクトでボレーシュートを決めるのは難しいでしょう。
先ほどの赤2と違ってキーパーにも多少の余裕があります。
もし赤4がボールをコントロールして止めた場合、近くにいる青の選手が対応すれば、とりあえずは大丈夫でしょう。
あなたのお子さんが絶対にやってはいけないプレー
もし、全体がラインを上げているのに、一人だけ残ってしまったらどうなるでしょうか?
他の選手の押し上げが無駄になるだけでなく、大ピンチを招くことになります。
ここまでの内容をお子さんに説明して、(ラインを上げる時は)「絶対に残るな」と、しつこいくらいに伝えてください。
この記事のまとめ
ラインを上げる目的の一つは、
(ディフェンス)ラインを上げることで、相手の(フォーワード)ラインを下げることです。
相手のラインを下げる=ゴールから遠ざけるということでもあります。
ラインを上げた場合と上げなかった場合。
どちらがより危険が少ないか、
なぜコーチが大きな声で「上げろ!」と言うのか、お分かりいただけましたでしょうか?
次回はもう一つの目的、「全体をコンパクトにする」を説明したいと思います。
(現代サッカーにとっては、どちらかというと、この「コンパクトにする」の方が重要です)
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