オフザボールの動き|ビルドアップ編

アギーレ監督は選手選考の基準の一つとして、「90分ゲームで、1人がボールを持っている時間は2分しかない。残り88分のボールを持っていない(オフザボール)時間をどう使うか注目している」と答えたそうです。
今回はオフザボールがいかにチームに貢献できるかを、実際のプレーを再現しながら見てみましょう。
「パスコースを作る」
「味方のためにスペースを作る」
「味方が作ったスペースを使う」
の3つに注目してください。
具体的な練習メニューについては、Tiki-Taka Styleで紹介している、ほとんどの練習メニューを使ってオフザボールのトレーニングをすることができます。
ビルドアップの基本陣形
青チーム:1-4-3-3、赤チーム:1-4-4-2とします。
青はGKからビルドアップしながら前進するのが特徴のチーム。
それに対して、赤は2人のFWが高い位置からプレスを開始します。

青は両センターバックがサイドに開き、両サイドバックが高い位置をとります。
相手FW2人に対して、中MFがセンターバックの間におりて、3対2にしました。
この場面では数的優位を作ることが非常に重要です。
なぜなら、ビルドアップの第一段階でボールを奪われてしまっては、失点に直結してしまうからです。
3対2ですが、GKを含めると4対2。数的優位は[2]です。

GKからのビルドアップ
ゴールキックからGKが右CBにパス(1)
赤1が軽くプレッシャーをかけます。
右CBと右SBでパス交換(2)(3)
この時、赤1の後方にスペースがあります。

右MFはそのスペースに入り、赤1と赤2の大きなギャップを使ってボールを受けようとします。

しかし赤の監督は試合前に指示してるはずです。「FWはしっかりディフェンスしろ。君はメッシじゃないんだ。」「2トップの間を閉じて、相手CBからの縦パスを防げ」
指示通り赤2がスライドしてギャップを閉じ、右MFへの縦パスを防ぎました。

青はサイドを変えたいところです。
右CBから中MFへパス(4)
中MFから左CBへパス(5)

赤2がスライドしてついてきます。
赤1はそれほど献身的なディフェンスをするタイプではありません。少し遅れます。
左CBから左SBにパス(6)
赤3のプレッシャーを感じた左SBは左CBに戻します(7)

先程同様、赤1と赤2のギャップを右MFが狙ってます。

赤1は監督に怒られるのが怖いので、がんばってギャップを閉じます。

よく周りを見ているセンターバックであれば、右サイドに大きなスペースができているのを見逃さないでしょう。
左CBは、今度は中MFを経由せずに、右CBへパス(8)
右CBの次のプレーを予測して、右SBは赤6を引きつけながら、高いポジションをとります。

右SBの狙い通り、スペースが大きくなってます。
右CBはフリーの状態です。コントロールオリエンタードで前へ。そのまま運ぶドリブルで前進します。
パス(8)は長いボールですが、ボールは疲れません。
しかし、赤1と赤2は疲れます。
(この場合、体力的な疲れより、精神的な疲れが大きく影響します)

赤1が間に合わないので、赤5が右CBへプレッシャーをかけます。

右MFは、赤5,6,7の三角形の中にあるスペースに入って、ボールを受けようとします。

ここでもはやり、赤は縦パスを入れられたくありません。
赤5は右MFへのパスコースを切ります。
それにより、「スペース」が移動しました。
今度は中FW(トップ)が降りて、そのスペースに入ります。

右CBは中FWにくさびのパス(9)
中FWには赤7(センターバック)が厳しく寄せてますが、中FWは前を向く必要がありません。足元にしっかりとめて、赤4の裏を取った左MFへパス(10)

赤7(センターバック)が釣り出された状態で左MFが前を向いてボールを保持してます。
相手3ラインのうち、2つ超えたことになり、ビルドアップ完了です。
ここから最終ラインを崩すという局面に入ります。

ここまでの一連の動きを、青チームの「オフザボール」というテーマで考えた場合、最も重要な働きをしたのはどの選手でしょうか?
正解はありませんが、右MFの動きに注目して、できれば最初からご覧ください。
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右MFは1回もボールに触ることなく、フリーランニングで相手を動かし、スペースを作り、スペースを使い、味方に有利な状況を作り出しています。
素晴らしいオフザボールの動きです。