運ぶドリブル|ビルドアップしながらスムーズに前進する方法
特にジュニア年代では、「ドリブル」にこだわったトレーニングをされるチームが多いようですが、「ドリブル」を「運ぶ」ドリブルと、「抜く」ドリブルに分けて、トレーニングされてますか?
多くの場合、「抜く」ドリブルのトレーニングではないでしょうか?
「ドリブル」=「足元の技術」ではなく、ゲームを支配するための手段と考えるなら、「運ぶドリブル」も有効に使えなければいけません。ここでは「運ぶドリブル」の練習方法を紹介します。
ビルドアップを優位にすすめるための運ぶドリブル
試合中、運ぶドリブルをできる(させてもらえる)場所と局面は限られます。
自陣の低い位置(相手の高い位置)でのビルドアップの局面です。そして、センターバック、守備的ミッドフィルダーに特に求められるプレーです。
例えば、センターバックに相手FWが1人でプレスにきた場合。
センターバック同士のパス交換で相手FWのプレスを交わすことはできますが、運ぶドリブルを使うとより有利な局面を作ることができます。
- 右CBが左CBにパス
- 左CBは運ぶドリブルで、相手のラインを超える
このように、相手のラインを一つ越える、あるいは崩すというイメージで前進します。
FWにとって、(前方へのプレスより)後ろに戻りながらのプレスは精神的にも肉体的も負担が大きく、緩くなりがちです。
次に、センターバックからサイドバックにパスする場合で見てみましょう。
下図のような状況でセンターバックからサイドバックへパスが通っても、すぐに相手のプレスを受けてしまいます。この状況でマイボールを失ってしまう場面を、本当によく目にします。
しかし、センターバックの運ぶドリブルで相手を引きつけて、フリーになったサイドバックにボールをつなぐことができれば、一気に前進できます。
このように、運ぶドリブルを有効に使うことができれば、中途半端なビルドアップによって低い位置で奪われてしまう回数が減ります。
それに伴い、ショートカウンターでの失点は確実に減っていきます。
運ぶドリブルの練習方法
運ぶドリブルのポイントは、「顔を上げて周囲の情報を収集すること」です。
情報とは、運べるスペースと、運ぶことによって、相手と味方の状況に起きる変化のことです。
アウトサイドでボールを押し出すようにドリブルすれば、顔は下を向きにくくなることを意識して、以下のトレーニングを行ってください。
混雑するスペースでの運ぶドリブル
- 人数に応じた大きさのグリッドをつくる
- 2組に分かれる
- 1組は縦方向、もう1組は横方向に運ぶドリブル
- 人にもボールにもぶつからないように顔を上げて見る
全てのカテゴリーで、ウォーミングアップを兼ねて行ってください。5分くらいで十分です。
動きが制限されたディフェンスを付けての運ぶドリブル
次に、相手を付けてみます。
- ディフェンス(青)2人がライン上に立つ
- ディフェンスはライン上しか動けない
- コーチの合図で攻撃(黄)の3人が同時にスタート
ドリブルできるスペースを見つけて運ぶ。
このトレーニングも短い時間で十分でしょう。
U12以下のカテゴリー向きです。
ポゼッションからの運ぶドリブル
次に、ボールをポゼッションしながら、運べる隙を見つける練習です。
- 下のようなグリッドを作り、6対4でポゼッション
- 攻撃側は内側のグリッドには入れない
- ポゼッション中、ボールが内側のグリッドを通過するのはOK
- 攻撃側が、運ぶドリブルで内側のグリッドに入れば得点
- 攻守は時間で交代
- 6対4でポゼッションが難しい場合、人数を調整
- 攻撃側は、まずボールを失わないことを意識する
- 内側のグリッドに安全に運べる状況になるまで、テンポよくボールを動かす
- 内側のグリッドに入る前に相手を抜いてはいけない(抜かずに運ぶドリブルで入る)
- ディフェンスはボールを奪うより、内側のグリッドにボールを運ばれないようにする
試合に近い状況で前進する
最後にゲーム形式でのトレーニングを紹介します。
黄が攻撃、青がディフェンスです。黄が一方方向へ攻撃し、時間または回数で攻守交代するゲームです。
- 図のように配置。「3v1エリア」「3v2エリア」に分け「3v1エリア」からスタート
- 攻撃の3人は3v1エリアでボールを保持
- ボールを動かしながら、前進できる状況になったら運ぶドリブルでラインを越える
- ラインを越えた青はそのまま「3v2エリア」に残る
- 「3v2エリア」のディフェンスは攻撃側がドリブルでラインを越えてからディフェンス開始
- 3v2でボールを保持し、前進できる状況になったら、運ぶドリブルでゴールラインを越える
- ゴールラインを運ぶドリブルで越えたら得点
- ディフェンス側がボールを奪ったり、グリッドから出た場合、3v1エリアからリスタートする
- 3v1エリアの突破が簡単すぎる場合、3v2にする。あるいは「パスを7回つないでからラインを越える」などのルールで調整
ゲーム形式のバリエーションとして、ゴールを置いて、最後にシュートを入れてもいいでしょう。
ただし、実際の試合では、シュートを打つ前は、「抜くドリブル」であり、「運ぶドリブル」からシュートを打てる状況はまずありません。