コントロールオリエンタードとドリブルの練習メニュー
スペインに「コントロールオリエンタード」というサッカー言語があります。
聞き慣れない単語でピッタリくる直訳がないのですが、特に新しいわけでも、高度なプレーでもありません。
日本の現場で使われる「ファーストタッチ」が近いですが、「トラップ」とは違います。
「次のプレー方向を意識したコントロール」となります。
実際の試合のプレーで見てみましょう。
青1が青2にパスを出そうとしてます。
青3は「青2からパスが来るかもしれないな」とイメージしている段階です。青3は自分の前にスペースを見つけました。
青3は自分をマークする相手から少し離れるために、1~2m、スルスルっと移動。
この「スルスル」が大事で、急に動き出したり、スピードを上げて移動すると、相手が警戒してしまいます。
この動きによって、青3とディフェンスの前にパスを受けるためのスペースができました。
青3はパスを受け、「コントロールオリエンタード」で相手ディフェンスの背後(自分が見つけたスペース)にボールを運びました。
もし青3が青2からのパスを足元で止めていたらどうなるでしょうか?
青3がディフェンスの背後に進むには、ディフェンスと正面から1対1の勝負を仕掛けなければいけません。
多くの場合、後ろに下げるパスを選択することになるでしょう。
足元に止めるトラップとコントロールオリエンタード。
正面からの1対1と、(抜かずに)相手の背後を取るプレー。
比較していただければ、コントロールオリエンタードがいかに有利な状況を作り出しているかわかります。
青3は、天才イニエスタのプレーを再現したのですが、このプレーは天才ではなくても、できそうではないですか?技術的にはグラウンダーのパスをインサイドでコントロールしただけですから。
コントロールオリエンタードの練習メニュー
4対1のロンドで行います。(3対1でも可)
ロンドの基本についてはこちらも参考にしてください。
通常のロンドはパスを回すだけですが、ディフェンスの隙を見つけて、自分の向かい側までドリブルでボールを運びます。
ドリブルで反対側まで行けたらその選手の「貯金」とします。
その後のプレーでミスしてディフェンスに奪われてしまったら貯金を使い、ディフェンスにならなくていいというルールです。
具体例で見てみましょう。
1本目のパスをつなぎます。
この時点ではまだディフェンスが付いてきていますので、前に出るプレーは少し強引かもしれません。
2本目のパスを素早く通せば、ディフェンスは遅れます。
この時に出来た隙(スペース)を見つけて、コントロールオリエンタードで前に出ます。
パスを受ける最初のタッチで、「グッと」前に出るイメージです。
前に出たら、ドリブルで反対側まで進みます。
ドリブルの途中でディフェンスに奪われたら、奪われた選手がディフェンスに。
成功したら「貯金」。他の選手が空いたスペースを埋めて、プレー再開です。
前に出るときの状況判断について
ボール保持者に対してディフェンスが正面にいる場合と、少し角度がある場合。
ボール保持者(攻撃側)にとっては後者の方が有利です。上の練習では、正面にいる相手にドリブルを仕掛けるプレーでは、失敗するケースが多いでしょう。しかし、一概に悪いとは言えません。
例えば、相手ペナルティエリア内であれば、ゴールに向かう積極的ないいプレーでしょう。
しかしビルドアップの段階では、リスクの高い悪いプレーとなるでしょう。
この練習では、実際のゲームの場面までは設定できませんので、こうした状況判断についての説明が必要かもしれません。
4対2のロンドでコントロールオリエンタード
- 図のようにグリッドを4分割した状態で4対2のロンドを行います。
- グリッドから出るにはコントロールオリエンタードかドリブルでのみ出ることができます。
- パスでグリッドを出ることはできません。
- 選手の移動に制限はありません。
青1から青4にパス。
青4はコントロールオリエンタードで隣のグリッドへ。
青4とディフェンス二人の動きを見た青3が青4のサポートに入ります。
青3は非常にいい動きでサポートに入ってますが、こちらの方がいいでしょう。微妙な違いがわかりますでしょうか?
選手の移動に制限はありませんので、一つのグリッドで3対2になってしまうこともあります。この場合、狭いスペースから逃れるために、できるだけ早くコントロールオリエンタードでグリッドを出た方がいいでしょう。
コントロールオリエンタードで出れない場合、ドリブルでの突破を試みます。
コントロールオリエンタードを強調したミニゲーム
次はゲーム形式でトレーニングしましょう。単純なルール設定でコントロールオリエンタードとドリブルを強調します。
- 2対2プラスフリーマン。
- ラインゴール。
- 図のようにピッチを3分割し、「ラインをコントロールオリエンタードまたはドリブルで超える」(=ラインをパスで超えない)。
- フリーマンがドリブルで超えてもよい。
- バックパスでラインを越えてもよい。
このゲームをジュニア年代で行うと、ドリブルが得意な選手の1人舞台になってしまう可能性があります。
その場合、「1人の選手が続けてラインを超えることはできない」というルールを追加してください。
バリエーション
- ミニゴールを準備できる場合はゴールを設置。
- 3対3プラスフリーマン。