得点の匂いがぷんぷん。マイナスのクロスを狙うべき理由
「決定力不足」に悩んでシュート練習に励むより、「チャンスの質の向上」を目指した方が効率がいい場合があります。
「チャンスの質」とは、得点の匂いがするかどうか、シュートが簡単かどうかと言い換えることができます。
かつて、クライフ氏が「相手ペナルティアリア内のゴールライン上(下図の黄色)からのマイナスのクロスは、得点の可能性が高い」と言ったそうですが、相手陣内を深くエグった状態からのクロスは、得点の期待が大きく膨らむ瞬間。守備側にとってはとっても「ヤバい」瞬間です。
今回はなぜマイナスのクロスが有効な攻撃なのか、詳しく見てみましょう。
そもそもマイナスのクロスとは
クロス(ラストパス)が相手ゴールに向かっていけばプラス、反対ならマイナスになります。
シュートの難易度を比較
プラスのクロスとマイナスのクロス。
シュートの難易度がどう変わるか、見てみましょう。
プラスのクロスの場合
青1、2、3から出たパスは全てプラスです。
どれが最も難しいシュートでしょうか?
あなたのチームのエースストライカーでイメージしてください。
(ディフェンスなし、GKだけの状態と仮定して)このパスを受けたエースがダイレクトかツータッチくらいでシュートを決めるシーンをイメージできますか?
1は難しい。ダイレクトはまず無理
2も難しい。ファーストタッチが完璧なら決まるかも
3は、エースが調子よければ決めてくれるかも(いや、無理か?)
マイナスのクロスの場合
では、マイナスのクロスはどうでしょうか?
3からパスが出ることはないので、1と2だけ見てください。
1は「プラスの3」より少し簡単。何とかなるかも。
2は決めてくれそうじゃないですか?
実際、2からのパスより簡単なシュートは、PKくらいしか思いつきません。
ですので、マイナスのクロスを狙うべき理由は、「シュートが簡単」だからです。
ディフェンス側の難易度を比較
次に、ディフェンス側の視点でみてましょう。
プラスのクロスに対するディフェンス
赤が正しいポジションを取れていれば、1,2,3のどこからパスが来ても、なんとなく守れそうではないですか?
マイナスのクロスに対するディフェンス
サイドをえぐられて、ディフェンスが遅れてしまった場合、この場面ではディフェンスはマイナスのクロスに対しては無力。
スライディングしても間に合いません。
もし幸運にもシュートがGKやポストに当たって跳ね返ってきたら、役立つかもしれません。
では、赤のディフェンスが頑張って青より前に出た場合どうなるでしょうか?
青2は、この状態でもためらわず、マイナスのクロスを入れるべきです。
味方に合わせるというより、(シュートのような)低く速いボールを、相手の足にぶつけるようなイメージです。
ディフェンスは自陣ゴールに向かって走ってます。そこへ低く、速いボールがきます。
必然的にオウンゴールの可能性が、非常に高くなります。
攻撃側の視点では、マイナスのクロスからの相手オウンゴールは、自らの得点としてもいいでしょう。
マイナスのクロスを狙うべきもう一つの理由は、「ディフェンスが守りにくい」また、「オウンゴールの可能性も高まる」からです。
「サイドからのクロス」と表現されるチャンスでも、このクロスと
このマイナスのクロスでは、チャンスの質が全く違います。
チームとしての狙いを「サイド攻撃」ではなく、「サイドを深くエグってからのマイナス」に変えると、ストライカーの能力が変わらなくても、チームとしての得点能力は上がるでしょう。