ラインを「上げろっ!」の意図を解説(二)~問題のスペースが見えますか?
なぜコーチはラインを「上げろっ!」と叫ぶのか?
前回の記事でラインを上げて、相手を下げるため、と紹介しました。
今回もサッカー経験のないお父さんお母さんを対象に、ラインを上げて「コンパクトにする」を紹介します。
お子さんの試合の観戦力を上げて、「今日の相手はコンパクトだったねー」と親子でサッカーっぽい会話ができるように役立てていただければ幸いです。
コンパクト≒サッカーの進化
「コンパクト」というキーワードは、現代サッカーを進化させた要因の一つです。
例えば、今テレビの解説者として活躍されている方の現役時代と、今現在のコンパクトさを比べてみましょう。
解説者の時代のイメージはこんな感じだったはずです。
今現在はこうです。
人口密度が全然違いますね。
このようにコンパクトな状態を作り出したのは、ディフェンス側です。(イタリア発祥ですが、歴史的な詳細は省きます)
このコンパクトなディフェンスによって「コンパクトな状態を作ってボールを奪う⇒コンパクトな状態でもボールを奪われない技術を身につける」という好循環が起こり、サッカーがますます面白くなりました。
世界トップレベルの実例でみてみましょう。
スペインリーグ、バルセロナと格下の相手チームの対戦。
赤が攻撃するバルセロナ、青がコンパクトに守る格下チームです。
この状態は、「今日は非常にコンパクトなブロックができてますから、バルセロナにとって簡単なゲームではありませんね」解説されるでしょう。
このようなディフェンスに対する攻撃側の対処法は、「上手くなる」ことです。
メッシがこのコンパクトなブロックを破って得点すると、「メッシにとってはこの(狭い)スペースでも十分なんでしょうね」と解説されます。
これはトップレベルだけでなく、ジュニア世代にも当てはまることです。
高い技術を身につけたジュニアチームに、コンパクトなディフェンスができないとどうなるか、具体的に見ていきましょう。
ラインを上げた場合(=コンパクト)
赤が攻撃、青がディフェンスの非常によくある、分かりやすい場面です。
赤1がサイドをドリブルで突破し、相手陣地深くまで侵入しました。
ディフェンス二人に囲まれてしまったので、赤1は赤2にバックパス。
この場面です。
青の選手がラインを上げなければけないのは。青のコーチが「上げろっ!」て叫ぶのは。
ラインを上げた状態は、先ほどのバルサの相手チームと同じような状態(コンパクトなディフェンス)になってます。相手ボールではありますが、青にとってそれほど危険な状態ではありません。
(ちなみに赤1、赤3はオフサイドポジションです。ですが、ラインを上げる目的はオフサイドをとることではありません)
ラインを上げなかった場合(≠コンパクト)
同じ場面でラインを上げなかったらどうなるでしょうか?
赤1がドリブル、バックパスの場面からスタートしましょう。
全体としてラインを上げるチームではなくても、近くにいる青1はディフェンスに行くでしょう(行かないとおそらくコーチに怒られるでしょう)
この場面が(青にとって)問題なのですが、わかりますか?
拡大してみます。
青が全体としてラインを上げなかったために、黄色の大きなスペースができてしまいました。
(この付近はバイタルエリアといい、相手に自由にプレーさせてはいけないエリアです)
「大きなスペース」は誇張した表現ではありません。ジュニアの選手でもこれくらい大きなスペースがあれば、何でもチャレンジできます。
まずはドリブルでの単独突破です。
次はコンビネーションで崩すパターン。
赤2から赤4にパス。赤4は相手に寄せられて余裕はありませんが、
大きなスペースに赤1が入ってくれば、簡単です。
(赤2⇒赤1⇒赤4の逆パターンもあります)
次はもっと綺麗に崩すパターンです。
スペースにトップの赤3が降りてきて、縦パスを受けます。
赤1はオフサイドに注意しながら、ディフェンスラインの背後を狙います。
思わず赤に拍手したくなるようなプレーですね。
反対に青にとっては、バイタルエリアを自由に使われてしまう、非常にまずいディフェンスということになります。
まとめ
お子さんのチームがラインを上げるのは、ディフェンスをコンパクトにして相手がプレーできるスペースを消すためです。
おまけ
前回の記事で好評でしたので、今回も「あなたのお子さんが絶対にやってはいけないプレー」を紹介します。
赤1が赤2にバックパスした場面、青1があなたのお子さんだと思ってください。
この状態で、青1がイノシシのように赤2に突っ込んで、赤2に抜かれてしまっては、最悪です。
相手が前を向いてボールを持っている時は、ボールを奪えなくてもいいので、まず抜かれてはいけません。自由にプレーさせない程度にまで相手との距離を詰めて、待て、です。