コーディネーショントレーニングとは?「昔遊び」で運動神経アップ
「何かぎこちない。もう少しスムーズに動けないものか?」
お子さんのプレーを見ながらそう感じる方は少なくありません。
「技術が未熟なのは仕方ないとして、あの硬い動き!」。ハッキリ言ってしまえば「運動神経が悪い!」とお考えではないでしょうか?
しかし、お子さんの運動神経が悪いのではなく、「運動の経験が少ない」ことが、ぎこちなさの原因です。
解決方は単純です。運動の経験が少ないのだから、たくさん経験させればいい。そして成長期の運動経験として最適なのが、脳も活性化させる「コーディネーショントレーニング」です。
時には親子で一緒に、楽しみながら体を動かすことで、ぎこちない動きは改善されます。具体的なトレーニングメニューも紹介しますので、是非お試しください。
*コーディネーショントレーニングの効果を上げるには適切な道具とメニューが役立ちます。
1 コーディネーショントレーニングとは子供の運動神経を良くするトレーニング
コーディネーショントレーニングとは、複数の動きを同時に行うトレーニングです。
例えば、右手と左手でジャンケンして、どちらかが勝つようにしてみましょう。
できますよね?大人の方ならそれほど難しくはないと思います。
では、お近くの方に、勝つ方の手を指定してもらってください。『じゃんけん』と同時に『右(左)』と声を掛けてもらいます。
「右」と言われたら右手が勝つように。「左」と言われたら左手が勝つようにグー・チョキ・パーを選んでください。
できましたか?
『じゃんけん』と「声に出す」。同時にどちらかを「聞き分ける」。瞬時に左右の手に何を出すか「指令を出す」。間違えのないように手(指)を「動かす」。
こうした動作で脳に刺激を与え、脳から体への伝達速度を早く、正確にすることが、コーディネーショントレーニングの目的です。
1-1 コーディネーショントレーニングはゴールデンエイジに。遅くても早くてもダメ。
トレーニングには最適な時期があり、早すぎても遅すぎてもダメ。コーディネーショントレーニングを神経系が発達するゴールデンエイジに行うことで、子供の運動神経が発達します。
大雑把に「子供の外遊び」=「コーディネーショントレーニング」と考えていいのですが、子供が外で遊ぶ習慣、環境が少なくなるにつれ、コーディネーショントレーニングの重要性が高まりました。
外遊びでも発達するコーディネーション能力とは何か、少し詳しく見てみましょう。
2 コーディネーション能力とは身体の調整能力
コーディネーション能力とは、身体の機能全体の調整力です。
運動・スポーツの動作は全て、筋力、持久力、柔軟性、バランス、スピードなどの要素が組み合わさったもの。この組み合わせをスムーズに調整する能力がコーディネーション能力です。
コーディネーション能力は次の7つに分類できます。
①定位能力相手や味方、ボールなどの周囲の状況と関連付けながら動きの変化を調整する能力
②変換能力状況が変わったとき、動作を素早く切り替える能力
③リズム能力耳や目からの情報を動きによって表現し、イメージを現実化する能力
④反応能力合図を素早く察知し、適時に適切な速度で正確に反応する能力
⑤バランス能力空中や動作中の全身バランスや、崩れた姿勢を素早く回復する能力
⑥連結能力身体の関節や筋肉の動きをタイミングよく、無駄なく同調させる能力
⑦識別能力手や足、頭部の動きと視覚の関係、ボールなどの操作を精密に行う能力
出典:「スポーツトレーニングの基礎理論」(西東社)
以上のコーディネーション能力は、個々に独立したものではありません。複数が関連して動作のプロセスを調整するため、適切なトレーニングによって、各能力をバランス良く高めていきましょう。
3 コーディネーショントレーニングメニュー
3-1 初級
【指おり遊び】- 両手を「パー」の状態にしてスタート。「1・2・3・・・10」数字を数えながら、親指から順番に指を折って数えます。両手同時に行います。
- 上記を小指から順番に指を折ります。
- 右は親指から、左は小指から順番に指を折ります。
- つま先歩き
裸足になって、かかとをしっかり上げて、つま先に体重を乗せます、足の指で床を蹴るように歩きます。
- かかと歩き
かかとにしっかり重心を乗せて歩きます。
- ひよこ歩き
「ウサギ跳び」の姿勢になって手は後ろに組んだまま歩きます。
- お尻歩き
かかとでお尻をたぐりよせるようにして前へ進みます。
または、左右のお尻に体重を移動させながら進みます。両方試してみましょう。
【しっぽ取り鬼ごっこ】
各人がビブスやゼッケン、タオルなどをズボンの後ろにはさみ、少し出します(しっぽのように見えます)。決められたスペースの中で、尻尾を取り合います。取られたらスペースから出ます。最後まで残った人が勝ち。
【バランスストーン】
遊びながら運動能力を高められるバランスストーン。
ジャンプして着地するだけのシンプルな遊具でも工夫次第でバランストレーニングに。
【ケンケンパ】いろいろなステップでリズムよくジャンプします。
昔は道路に〇を書いて遊びましたが、今は怒られそうですので、やめときましょう。
スピードリングという商品でケンケンパにちょうどいい商品がありますので、活用してください。
【ティッシュキャッチ】
大人が立って、高い所からティッシュを一枚落とします。ヒラヒラ落ちてくるティッシュをキャッチします。家の中で、ヒマヒマで仕方ない時にどうぞ。
周囲にテーブルや足につまずくものがないか、確認してくださいね。
【いろいろボール投げ&キャッチ】
- ボールを頭の上に投げてキャッチ
- ボールを頭の上に投げて、手を3回たたいてキャッチ
- ボールを頭の上に投げて、その場で1回転してキャッチ
- ボールを頭の上に投げて、前転して起き上がってキャッチ
- ボールを頭の上に投げて、後ろ手(背中)でキャッチ
- ボールを頭の上に投げて、頭に当てて(ヘディングして)キャッチ
3-2 中級
【お手玉】まずは、こちらを参考に「3つ」を目指しましょう。
動画を見ると、お手玉で、動体視力が鍛えられることが分かります。また、1個のボールを見ずに、間接視野で、2個3個を見る能力も身につきます。
【指示通りジャンプ】
大人が「まえ」「うしろ」「右」「左」と声を掛けます。その声を聞いて、
- 指示通りにジャンプします。
- 指示とは逆方向へジャンプします。
大人が「まえ」「うしろ」「右」「左」と声を出さずに指を差すバージョンにもチャレンジしましょう。
アジリティクロスがあると便利です。
【ボールキック&キャッチ】
- ボールを足の甲で蹴って、頭の上でキャッチ
- ボールを足の甲で蹴って、ジャンプしてキャッチ
- ボールを足の甲で蹴って、後ろ手(背中)でキャッチ
高さ15cmから20cm程度のミニハードルを使って、さまざまなステップ、ジャンプを行います。ミニハードルを使ったトレーニング方法はこちらをご覧ください。
3-3 上級
【いろいろパス交換】二人組になって、それぞれボールを1個持ち、色々な方法でパス交換します。
- 一つは胸の位置で。一つは足でキックして転がしてパス交換
- 一つは胸の位置で。一つはワンバウンドさせてパス交換
- Aは自分のボールを真上に投げる。Bは相手の胸に向かってパス。Aはパスを受けて返して、落ちてきたボールをキャッチ
【いろいろバランス】
子供のバランストレーニングは体幹を鍛え、姿勢が良くなる、集中力が高まるなどの効果があります。
【ラダーステップ】
素早く、キビキビ動くために、「ラダー」と呼ばれる、はしごのようなツールを使ってのステップが有効です。
特にサッカーでは、よく使われます。
決められた通りのステップを早く正確に実行するためのトレーニングです。下の図を見ながらイメージトレーニングしてみてください。
【リアクショントレーニング】
リアクショントレーニングとは、相手の動きに合わせて、自分の動きを素早く切り替えるトレーニングです。
Bが攻撃、Aが守備の鬼ごっこです。
Bは左右どちらかの青いマーカーにタッチすれば勝ち。
AがBより先に赤いマーカーにタッチしたらBは青いマーカーにタッチできません。
この状態では、Bは青いマーカーにタッチできません。
キャンプやBBQなど大勢集まる場所で、盛り上がりましょう。
4 コーディネーショントレーニングの注意点
コーディネーショントレーニングについて、ここまで読んでいただいたあなたは、きっとお子さんのスポーツに関して強い関心を持っておられるのだと思います。
ゴールデンエイジの記事にも書きましたが、成長期の子供のトレーニングには親(大人)の関りが重要です。是非、適切な時期に適切なトレーニングができる環境を作ってあげてください。
>>>ゴールデンエイジとは?子供の運動神経がググっと伸びる黄金の成長期
ただし、次の2つのことを常に頭に入れながら、です。
4-1 早期専門化の弊害に注意
早期専門化の弊害とは、特定の動作を何度も繰り返すうちに、身体の一部を酷使してしまうことです。
(代表的なものが「野球かた」「テニスひじ」です)
そのため、子供が幼少期から一つのスポーツに過度に取り組むのは好ましくありません。
早期専門化の弊害を防ぐための取り組み、啓蒙活動がそれぞれのスポーツ協会・団体で行われているはずです。そうした活動から、しっかり知識を学んで、「弊害」からお子さんを守りましょう。
4-2 ドロップアウトしないよう注意
また、競争する環境が厳しすぎると、そのスポーツそのものについていけなくなってしまったり(ドロップアウト)、スポーツに熱中できなくなったり(バーンアウト)する子供も珍しくありません。
ゴールデンエイジには、複数のスポーツを経験しながら、スポーツの面白さ、楽しさを味わわせてあげましょう。どのスポーツも均等にということではなく、メインのスポーツがあって、あえて他のスポーツもさせるというスタンスで十分です。
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コーディネーショントレーニングは、
- シンプルな昔遊びのようなトレーニングで、子供の運動神経を伸ばします。
- 特にゴールエイジと呼ばれる小学生年代には効果の高いトレーニング。
- 複数の動きを同時に行い、脳を活性化させます。