理学療法士によるフォームローラーの解説
フォームローラーがアスリートに指示される理由
近年、多くのスポーツ選手が競技前後に、フォームローラーを使用してウオーミングアップやクールダウンをしている姿をよくテレビなどでも見かけるようになりました。
試合会場に向かうための長時間の車の移動、連日続く試合などで蓄積されていく疲労を、効率よく回復していくためにフォームローラーが有用であるとされているためです。
フォームローラー開発の歴史的経緯
欧米では、1980代に理学療法の治療の1つとしてフェルデンクライス治療の中でバランストレーニングのための体の支えとして使用しはじめました。
この治療法を開発した物理学者のモーシェ・フェルデンクライス博士は、自身のサッカーで痛めた膝が悪化し医師に手術をしても成功率は50%といわれたことがきっかけに、自身で勉強しながらこの治療を開発されたそうです。
柔道の創立者でもある嘉収治五郎先生とも面識があり、その交流の中で得たさまざまな知識は治療の開発において非常に役にたちました。1987年にはフェルデンクライス治療を学んだ別の理学療法士がブロードウエイで活躍するダンサーに使用し、そのダンサーがその後とても有名になったことを機にダンサーの中ではマッサージを行うためには有効性があると広まっていきました。
筋膜リリースに活用
そして2009年ころから、現在一般的に認識されているように、過剰に活動しすぎた筋活動を抑制するためには筋膜が重要ということが認識しはじめられ、筋膜リリースのセルフトリートメントとして使用されています。
筋膜は全身をタイツのように覆っている筋の膜です。
それは綺麗なセーターの縫い目のように通常は配列されており、非常に柔軟性があり体の動きに伴って伸び縮みするものでが、怪我や過度の疲労を起こすと、その配列が崩れたり、硬くなったり、分厚くなったりします。
この状態が継続されると筋膜組織は肥厚し堅くなり、柔軟性は低下し、結果として運動に対する筋の適応性を大きく抑制してしまうのです。
疲労回復に効果
首であれば肩こりや頭痛、背中であれば背中のつっぱりや腰痛、膝であれば膝の痛みの原因となります。2013年カナダのNewfoundlaメモリアル大学が、激しい運動後の回復ツールとしてフォームローラーが有用であったと報告しています。
フォームローラを使用した場合、運動後の筋肉痛をやわらげ、筋肉の活性化や関節の可動域を高め回復が早かったようです。
フォームローラは体のさまざまな部分に使用することができるため、野球、バレーボール、水泳、柔道、サッカー、ダンスなどさまざまなスポーツ分野で使用することが可能です。
スペースもそれほどとりません。運動後に早期に疲労の回復が行えることは、障害の予防や高いパフォーマンスを維持していくこ中で非常に重要です。ぜひ、一度使用してみてください。
(参考資料)
・ウイキペディア
・フェルデンクライスメソッド入門/力みを手放す、体の学習法
・エンドレス・ウェブ/身体の動きを作り出す筋膜の構造とつながり
・Foam Rolling as a Recovery Tool after an Intense Bout of Physical Activity