野球の走攻守投に効果的!ラダートレーニングの実践練習法
紙一重のプレーで悔しい思いをした経験ってありますよね。
守備時の球際の強さや盗塁成功率の高さは強いチームの必須条件です。
野手の打球反応や盗塁のスタートのタイミングの良し悪しなど。それらの原因の多くは、動作の動き出しの1秒にも満たない、一瞬にあります。
ほんの一瞬のことではありますが、
その一瞬の差が、良い選手と並の選手の差であり、
時にチームの勝敗を分ける大きな差になったりします。
その一瞬の差をものにするためには、「敏捷性(びんしょうせい)」を向上させる必要があります。
敏捷性とは、動作を速く行うことに加えて、正確に行う能力のことを言います。
そこで、今回は、野球に必要な敏捷性を向上させる有効な方法として、
「ラダートレーニング」をご紹介します。*スピードトレーニングの効果を上げるには適切な道具とメニューが役立ちます。
ラダートレーニングは、
脳から各筋肉への送られる指令の伝達速度を上げ、動き出しの反応を速くする効果があります。
実際のラダートレーニングの方法を動画付きで紹介していますので、
是非、日々の練習に取り入れてみてください!
1 ラダートレーニングの野球に必要な敏捷性向上させる効果
ラダートレーニングで敏捷性を向上させることは、
守備や走塁には効果があるけれどもバッティングやピッチングには
効果がないのではないかと思われているかもしれません。
しかし、実は、ラダートレーニングは
バッターやピッチャーも含めたすべてのプレイヤーに有効なのです。ここでは、ラダートレーニングが
実際に野球のどの場面でどのような効果があるのかをみていきます。
1-1 守備での効果
ラダートレーニングによって敏捷性を向上させることで、守備では次のような効果が期待できます。
- 打球が飛んだときの一歩目が速くなる
- バント処理などの捕球から送球までが速くなる
- 外野手のフライの落下地点に入るまでが速くなる
特に、内野手は敏捷性がなければ、正しい捕球体勢がとれません。
バランスが崩れた状態で捕球すると、送球動作が遅れてしまいます。
しかし、現実的には無理な姿勢で捕球することもよくあると思います。
そのときは重心が身体の中心から離れた状態から素早く中心に戻す動きが必要になります。
ラダートレーニングを行うことによって、守備時の正しい体勢をとる動きや崩れた体勢から正しい体勢に戻す動きが速くなる効果が期待できます。
1-2 走塁での効果
走塁面では次のような効果が期待できます。
- スピードを落とさずにベースを回れる
- 盗塁するときのスタートが速くなる
- 牽制球を投げられたときの帰塁が速くなる
野球では、短距離走のように直線的に走ることはほとんどないと思います。
また、打球の行方や相手の守備の仕方によって瞬時に走るのを止めたり、走る方向を変えたりする必要もあります。
そのような野球の走塁独特の動きは、単純にダッシュのメニューを繰り返しだけでは向上しませんので、ラダートレーニングなどで鍛えていく必要があります。
1-3 バッティングでの効果
バッティングでは次のような効果が期待できます。
- 下半身の力を効率よくバットに伝えることにより強い打球が打てる
- 変化球にうまく対応できる
バッターの動作は、回旋や捻りの動作が重要な要素となっています。
回旋動作を行うということは、必ず軸が存在することになるので、後でご紹介するツイストステップなどの軸を意識するトレーニングが有効になります。
また、ピッチャーが投げたボールに柔軟に対応するには、股関節を左右バランスよく動かすことが重要です。
ラダートレーニングのステップに「もも上げ」の要素を加えることで股関節の動き良くする効果があります。
1-4 ピッチングでの効果
ピッチングでは次のような効果が期待できます。
- 下半身の力を効率よくボールに伝えることにより球速が上がる
- 下半身が安定してコントロールが良くなる
ピッチングは非常に繊細な動作です。
同じ球種を同じ握り方で投げようとしても、踏み出した足の着き方や軸足の重心のかけ方にズレが生じることで投げる瞬間の指先からボールへの力の伝わり方が微妙に変わり、ボールの軌道が変化します。
このズレをできるだけ小さくするためには、「1イン2アウト(イン・アウト・アウト・イン)」などのステップを繰り返し行って、足の着き方や重心のかけ方を確認することが非常に有効です。
2 野球に有効なラダートレーニングの基本ステップ
ラダートレーニングのステップの中から
野球選手の敏捷性アップに有効な基本ステップ10種類を紹介します。
①クイックラン
- 1マスに1歩ずつ足を入れ、できるだけ速く走ります
- 膝は高く上げるのではなく、速く動かすことを意識します
②ラテラル・ラン
- 横を向き、1マスに2歩ずつ足を入れ、できるだけ速く走ります
- 膝は高く上げるのではなく、速く動かすことを意識します
- 腕は肘を直角に曲げ、足と連動させて速く細かく動かします
- 向きを変えて反対側も同様に行います
③スラロームジャンプ
- 足を肩幅ほどに開きます
- 足幅を変えずに、外側の足はマスの外、内側の足はマスの中に入るように左右交互にジャンプします
- 両足同時に着地することを意識し、片足だけに体重がかからないようにします
④ケンパ
- 1マス目は片足でマスの中にジャンプします(ケン)
- 2マス目は両足を開いてマスの外に着地します(パ)
- 片足のジャンプは、左右交互に行い、マスの真ん中に着地することを意識します
⑤パラレル
- 1マス目はマスの外に1歩、2マス目はマスの中に2歩ステップします
- 左右交互に繰り返します
⑥カリオカ
- ダッシュのメニューではお馴染みのステップです
- 足先だけでステップするのではなく、身体の中心の軸を意識してしっかりと腰を捻ります
- 向きを変えて反対側も同様に行います
- 足の動きに合わせ、腕も前後に大きく振ることを意識してください
⑦1イン2アウト(イン・アウト・アウト・イン)
- 横向きになり、ラダーの外側に立ちます
- マスの中に1歩、外で2歩、中に1歩ステップします
- 上半身がブレないように、しっかりと腕を振ります
- 前後の重心の移動を意識してください
⑧1イン2アウト(スラローム前進)
- クロスステップでツイストしながら前に進みます
- マスの中に1歩、外で2歩、中に1歩、左右交互にステップします
- 最初はゆっくりでも良いので正確にステップしてください
⑨ツイストジャンプ
- 横向きになり、足を肩幅ほどに開いて、ラダーの外側に立ちます
- 上半身は動かさず、下半身だけを180°捻りながらジャンプします
- なるべく足の幅を変えずに、腰をしっかり捻ることを意識します
- 向きを変えて反対側も同様に行います
⑩スネークジャンプ
- 足を肩幅ほどに開き、足の幅を変えず両足でジャンプします
- 足先だけでジャンプするのではなく、身体の中心の軸を意識してしっかりと腰を捻ります
3 ラダートレーニングを応用した実践的練習法
基本のステップをウォーミングアップ時に取り入れるだけでも効果はありますが、ここでは、さらに実際にグラブやボールを使ったものなど、より野球の動きに近いラダートレーニングの方法を紹介します。
3-1 守備
普段行っている守備練習にラダートレーニングの要素を加えることで守備の技術だけでなく、1歩目の反応に必要な敏捷性を効率よく鍛えることができます。
まず、ゴロを捕球する練習です。
- グラブを付けた状態で、ステップを行います
- ラダーのステップが終わるタイミングでボールを転がしてもらって捕球します
- 同じステップばかりではなく、いろいろなステップを試してみてください
次に、後方のフライを捕球する練習です。
- グラブを付けた状態で、ラダーのステップを行います
- ラダーのステップの後にダッシュを行います
- ダッシュを数メートルした辺りにボールを投げてもらい、振り向いて捕球します
ステップの種類は何でも良いのですが、「ラテラル・ラン」や「1イン2アウト(スラローム前進)」などがおすすめ。
3-2 走塁
ラダートレーニングは、敏捷性を向上させるトレーニングなので、
常に素早く正確な動きを求められる野球の走塁にはもってこいの練習です。
より走力アップに重点を置くときは、基本ステップの「ラテラル・ラン」や「パラレル」にもも上げ」の要素を加え、ももを腰よりも高く上げてステップすると効果的です。
ももを上げてステップすることで、足の骨と背骨のあたりをつなぐ大腰筋(だいようきん)が鍛えられ、スタートダッシュの動きがスムーズになり、さらに速く走る際に重要なピッチ(足の回転数)を高めることもできます。
ウォーミングアップの際にダッシュを行チームが多いと思いますが、そのダッシュのメニュー前にラダートレーニングを行ったり、ラダートレーニングとダッシュのメニューを組み合わせたりすると効率の良い練習になると思います。
3-3 バッティング
バッティングは腕の力だけで行うのではないですよね。腕の力だけでは、いわゆる「手打ち」になってしまい、強い打球は打てません。
下半身の力を効率よくバットに伝えるためには、下半身と上半身をうまく連動させる必要があります。
練習方法としては、バッティング練習を行う前に「カリオカ」や「ツイストジャンプ」など腰を捻るステップを足先だけでステップするのではなく、腕を大きく振って身体全体で行ってください。
上半身と下半身を連動させることを意識してステップすることがポイントです。
3-4 ピッチング
ピッチャーは全ポジションの中でも特に下半身(足腰)の強化が重要視されており、ピッチャーだけ別メニューで走り込みや下半身強化のトレーニングを行うことがあると思います。
その下半身トレーニングに、ここでご紹介する動画のようにラダーを取り入れ、足の上げ方や軸足の使い方
軸足の使い方
踏み出した足への体重移動
4 ラダートレーニングを行う際の注意点
①意識
最も注意しなければならないのは、常に野球の動きを意識するということです。
何も意識せずにラダートレーニングを行っても、ラダートレーニングが上手くなるだけで野球技術の向上にはつながらないからです。
必ず、このステップをすることで、どこが鍛えられて、野球のどの動きに影響してくるかを意識しましょう。
②着地
ラダートレーニングのどのジャンプ、ステップを行う時も地面に足が着くとき、すなわち、着地するときに注意する必要があります。
着地の際は、かかとからではなく、前足部で着地するようにしてください。
野球の動きの多くは、前足部に重心がかかっていますし、短距離を走る時もかかとは着けずに走ると思います。
かかとから着地すると、足が地面に着いている時間が長くなってしまい、次の動作が遅くなります。
ラダートレーニングを行う時も、前足部、特に拇指球(ぼしきゅう)の辺りではじくようにステップしてください。
③スピード
速く動くことが目的のラダートレーニングですが、最初から速くする必要はありません
特に複雑なステップは、最初はゆっくり正確にステップすることを心がけ、正確にステップできるようになったら徐々にスピードを上げていくようにしてください。
最初から速くステップしようとして無理をするとケガにつながります。
④時間
ラダートレーニングは、短時間に集中して行うようにしてください。
チームの人数にもよりますが、1回の練習で5~10分くらい集中して行うようにしてください。
ラダートレーニングは、速く動くことが重要なので、長時間トレーニングしてしまうと疲れて動きが遅くなり、トレーニングの効率が落ちてしまいます。
5 ラインを引くのではなくラダーを使うべき理由
たまにラダーを使わずに、地面にラインを引いてラダートレーニングをされる方がおられますが、ラダートレーニングは、動きを規制した状態で、速く複雑なステップをすることが大事です。
地面に引いたラインなどでは、失敗した(ラダーの枠を踏んでしまった)ということを認識しづらいため、せっかくトレーニングを行っても効果が半減してしまうので、できるだけラダーを使用してください。
まとめ
・ラダートレーニングは野球のすべてのプレイヤーに効果がある! ・ラダートレーニングは常に野球の動きを意識しながら行う!
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